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2021年 07月 05日 会社設立

リスクは大きいが知っておくべき役員へのボーナス

会社を設立しても、ボーナスは欲しいですよね。
会社から社長など役員に支給するボーナスを損金に算入するには、法人税のルールを守る必要があります。

 

役員へのボーナスは原則、損金に算入されない

役員への月給やボーナスなどの給与は、原則、損金に算入できません。
もし役員への給与について好きなだけ損金算入を認めてしまうと、利益を操作して税金を不当に安くする会社が出てくるからです。
そのため税法では、原則は損金算入を認めていないのですが、次のいずれかにあてはまる給与だけは損金に算入できるものとしています。

 

【損金に算入できる役員給与の支払方法】
・定期同額給与
・事前確定届出給与
・業績連動給与

 

この3つの給与は、簡単に利益操作ができない支払い方法になっているため、例外的に損金算入が認められています。

役員のボーナスは「事前確定届出給与」を使う

3つのうち、もっともなじみ深い方法は「定期同額給与」だと思います。
「定期同額給与」とは、毎月一定の額を支給する方法です。
正確には「1ヶ月以下」のサイクルで同じ額を支払うというものなのですが、これを利用して、毎月同額の給与を会社から受け取っている経営者の方がほとんどだと思います。
しかしボーナスは年に数回しかありませんので、この方法では支給できません。
役員へのボーナスを支払うときに使うのは、「事前確定届出給与」です。
「事前確定届出給与」とはあらかじめ税務署に、いつ・誰に対して給与(ボーナスなど)を支払うかを税務署に届け出てから支払うものをいいます。
金銭のほか、株式や新株予約権による支払いも可能です。

事前確定届出給与を損金に算入する要件

それでは、事前確定届出給与を使ってどのようにボーナスを支払えばよいのかを解説します。

期限内に税務署に届け出を提出すること

事前確定届出給与を利用するには、「事前確定届出給与に関する届出書」と「付表」を税務署に提出しなければなりません。
一般的な提出までの流れは、次の3ステップです。

 

1:株主総会でボーナスの支給を決議する

2:税務署に届け出を行う

3:届け出の内容どおりにボーナスを支給する

 

以下、詳しく見ていきましょう。

株主総会でボーナスの支給を決議する

こちらは会社法のルールによる手続きです。
会社法には、取締役の報酬やボーナスは株主総会の決議によって決めるものとするルールがあります。(会社法第361条第1項)
もし会社の定款で役員のボーナスについての取り決めがあればこの決議は不要ですが、「株主総会の決議によって定める」等のように、定款では特に取り決めていない会社が多いと思います。

税務署に届け出を行う

会社で役員へのボーナスの支給を決めたら、その内容を税務署に届け出ます。
届け出の期限は、次のAかBのいずれか早い日までとなります。
A:職務執行開始日又は株主総会等の決議日のいずれか早い日から1ヶ月を経過する日
B:事業年度開始の日から4ヶ月を経過する日
たとえば、3月決算法人が5月20日に株主総会を開催した場合、届け出の期限は「6月20日」(Aのルール)となります。
届け出には「事前確定届出給与に関する届出書」と「付表」という書類を作成する必要があります。
これらの書類には、誰に(氏名や役職名)・いつ(○月○日)・いくら(○○円)で支給するか等を記載しなければなりません。

届け出の内容どおりにボーナスを支給すること

税務署に届け出た内容どおりの日付・金額でボーナスを支給します。
届け出よりも多く支払ってはいけませんし、逆に少なく支払うことも支給日がずれることもダメです。

損金不算入リスクのある役員ボーナス

「事前確定届出給与」の最大の注意点は、届け出の内容どおりにボーナスを支給しなければならないことです。
これができないと、ボーナスが損金不算入になるリスクがあります。
このことから、ボーナスの金額を決めるときは会社の年間の業績予想をしっかり行い、いくらであれば会社の資金繰りを圧迫しないかを株主総会の前によく検討しなければならないということです。
また、その金額が職務内容や法人の収益、使用人への給与の支給状況などに比べて過大だと判断された場合、その部分については損金に算入されませんので、この点にも留意する必要があります。(法人税法施行令第70条第1項第1号)
ちなみに、税務署に提出した届け出の内容を変更する手続きも存在します。 変更を必要とする理由が、
・臨時改定事由
・業績悪化改定事由
のいずれかにあてはまる場合です。

 

この場合は臨時株主総会で決議することとなり、税務署への届け出の期限も変わりますが、認められにくい手続きですので利用する際は税理士等にご相談ください。